犬の肥満は、1日に摂取するカロリーが、消費するエネルギーを上回る状態が続くことで起こります。成犬の維持に必要なカロリーは、体重5kgの小型犬で約430kcal、10kgの中型犬で約730kcal、20kgの大型犬で約1,230kcalが目安(中程度の活動量の場合)。これに見合った運動量として、小型犬で1日30〜40分・中型犬で40〜60分・大型犬で60〜90分の散歩や遊びが推奨されます。
摂取量や運動量に加え、避妊・去勢後はホルモン変化で基礎代謝が15〜25%ほど落ちることが分かっており、術後に同じ給餌量を続けると太りやすくなります。シニア期も同様に代謝が下がるため、フードや給餌量の見直しが必要です。
肥満は見た目の問題にとどまらず、関節・内臓・寿命まで連鎖的に影響することが複数の研究で示されています。代表的なリスクは次の3つです。
1. 関節炎・関節への負担
体重1kgの増加は関節への負担を大きく増やします。米Tufts大学は「肥満犬では体重を落とすことによる関節負担の軽減効果が、薬物治療を超えることがある」と指摘しており、変形性関節症や股関節形成不全の素因がある子では、体重管理は最優先の予防策のひとつです。
2. 糖尿病・心臓・呼吸器など生活習慣病
過剰な脂肪組織はインスリンの効きを悪くし、糖尿病のリスクを高めます。さらに胸腔・腹腔の脂肪が肺や心臓を圧迫することで呼吸が浅く速くなり、運動耐性も下がります。短頭種では特に影響が大きく、一度糖尿病を発症すると継続的な医療ケアが必要になるため、予防の意義が大きい領域です。
3. 寿命の短縮と麻酔・手術リスク
適正体重を維持している犬は、理想体重を超えた犬よりも平均1.5〜2.5年寿命が長いという長期研究(Purinaライフスパン研究)があります。また肥満犬は麻酔薬の用量設計が難しく、覚醒の遅れ・呼吸抑制・術後の傷の治りの遅さなどのリスクも高くなるため、シニア期に増える歯石除去や腫瘍手術を安全に乗り切るためにも、若いうちからの体重コントロールが効きます。
BCS(ボディコンディションスコア)チェック
あばらが触れるか・腰のくびれが見えるか・上から見て「砂時計型」かを5段階または9段階で評価する、獣医療で使われている体型評価のものさしです。BCS 6/9 以上は体重管理が推奨されます。
急激な体重減少・食欲低下を伴うやせは内分泌疾患や腫瘍など他の病気の可能性があります。また、膵炎の既往がある子では低脂肪フードの選定を獣医と相談のうえ行ってください。フードを試す前に動物病院で原因を確認するのが安全です。